1.地域主権への対応について
担当部局: 企画振興局 答弁者: 知事

問:
 民主党の進める地域主権と地方議会改革は,密接に絡み合っている。地域主権改革に関わっている主な地方政治家の顔ぶれを見ると,既得権益を守ろうとする古い体質の地方議会と戦ってきた,あるいは戦っている改革派の首長が多いようである。思い切った改革を進めようとすると,どうしても議会と対立するようになる。

 そこで,知事は,こうした改革派の知事や市長をどう捉えているのか,また自己分析して自身は改革派なのか伺う。
 さらに,これから「ひもつき補助金は廃止して一括交付金化する」「国の出先機関は原則廃止」「地方交付税の法定率を引き上げる」等改革が進んでいくが,最大のポイントは地方自治体が信頼するに足る機関か,という点である。
 そういう意味で政府は,思い切った地域主権を実現するために,「首長が議員の一部を自ら補佐する行政の主要ポストに起用し,政策の立案から執行まで深く関与する」,これは欧米の自治体では一般的な広義の議院内閣制の導入ということになるが,こうした改革を総務省では2013年の夏までに,地方自治法の抜本改正を進めながら,同法を「地方政府基本法」(仮称)に衣替えすることを目指している。
 今までの地方議会は,二元代表制,機関対立主義,是々非々で対応するといった,あいまいな定義しか,されていなかったのではないか。その結果,総与党化,単なる追認機関となり,多様な民意の反映や執行機関の監視などの,本来の役割を十分果たせていない,という現状認識が政府に蔓延し,現状のままでは信頼するに足りない地方政府と位置づけられているのだと思う。

 そこで,首長の権限をさらに強化し,政党色の薄かった地方議会も二大政党化を進め,与野党による活発な議論を進めることにより,信頼するに足る地方政府をつくっていこうという,地域主権の動きを知事はどう捉えているのか。
 また,新制度は選択制とする国の方針だそうであるが,知事は広義の議院内閣制の導入について,どのような考え方を持っているのか,併せて伺う。

答:
 様々なしがらみを絶って,改革に果敢に挑戦されている他の自治体の首長の姿には,大いに共感を覚えております。
 他方,改革派か否かは真にその取り組みの内容によって判断されるべきでありまして,議会と対立的であるかどうかということが,必ずしも真の改革派であるとは限らないというふうに考えております。
 私としては,行政運営に当たりましては,これまで先人の方々が築き上げてきた広島県の力そして宝を活かしながら,県民ニーズに即した良い施策は更に伸ばし,効果が上がらないものは果敢に変えていくという信念をもって首尾一貫して改革に取り組んでおり,私自身は改革派であると考えております。
 社会経済情勢は常に変化するものでありまして,制度・仕組み・事業等はこの変化に応じて,またはその変化を先取りする形で適切な見直しを行い,あるいはそれぞれの目的に沿ってより良く改善を行っていくべきであると考えております。従って,私としてはより多くの県民の皆様の将来の利益につながると判断される場合には,従来の考え方に捉われることなく勇気を持って改革を続けて参りたいと考えております。

 地域主権につきましては,政府は最重要課題の一つとして位置づけて,「地域主権戦略会議」や「地方行財政検討会議」を設置して,地方自治法の抜本的な見直しに向けての議論も始められたところでございますが,総じて言いますと政府の地域主権改革そのものが,まだ不透明な状況であると認識しております。

 従いまして,地方自治体の基本構造を今後どのようなものにするかということにつきましては,その大前提として地域主権確立の観点から地方自治体の組織・運営に関する国の関与や制限は,最低限に留めて地方自治体自らの判断と責任で決定できる仕組みを構築することが必要であり,それを踏まえた上で議論すべきものと認識をしております。ご指摘のとおり,信頼できる地方政府を創るという点につきましては,これは不断の努力を続けるべきものだというふうに考えます。
 地方議会における二大政党化につきましては,まず現在の法律的な政党の枠組み自体,主に2つの法律によって規定されておりますけれども,政治資金規正法,政党助成法いずれの場合におきましても,一定数以上の国会議員の所属等をその政党の要件としておりまして,国政の枠組みに基づいたものであるといふうに認識しております。
 他方,地方における課題は国における課題とは自ずから異なるものでございまして,国政での政策軸に基づく集合を前提とする現在の政党の枠組みというのは,地方議会においてそのまま適用することは必ずしも現在の日本の地方の実態に適したものではないのではないかと私自身は考えております。

 また,広義の議院内閣制の導入につきましては,首長・議員とも住民の皆様から直接選挙される現在の二元代表制の下においては,本来議会は知事と対等な立場で監視機能等を果たされるべきものとされておりますけれども,議員の身分のまま幹部職員等として知事の指揮監督下に入るというのは,むしろこの監視機能を弱めるものとして適切ではないのではないかと,現時点においては私自身は考えております。
 

2.効果的な産業政策について
担当部局: 商工労働局
企画振興局
答弁者: 知事
問:
  
リーマンショック以降の世界不況で失われたGDPは,米国で3.7%,日本全体で6.0%と一桁にとどまっており,本県では,日本全体とほぼ同じ−6%程度と見込まれている。
 この−6%を額に換算すると,名目GDPで7,200億円の減になる。ということは,約7,200億円の新たなGDPを県内にもたらすことができれば,この不況は容易に脱出できる。
 では,7,200億円の名目GDPは,政策レベルに落とすと,どれくらいの規模になるのか,まず,新たに観光客を誘致するとした場合,約1億4千万人を誘致する必要があり,現在の総観光客数が5,600万人であるから,2.5倍,増加させる必要がある。

 また,自動車の販売価格を1台200万円とした場合,県内で55万台を販売しないといけない。企業誘致で言うと,誘致実績から設備投資額が最大規模であった約8,000億円程度の企業であれば1社分,一般的な規模の企業誘致で考えれば,数十社程度の新規誘致が必要になる。公共事業で言うと,本州四国連絡橋尾道・今治ルートの事業費が7,500億円であるから,もう1ルート,橋を架ければ可能である。
 以上のように,広島県の景気回復に向けて,名目GDPで7,200億円規模の産業政策が求められる中,知事は,「海の道1兆円構想」を,観光振興と地域経済の活性化の切り札として掲げている。

 しかし,これは「現在約8,000億円の瀬戸内海沿岸5県の観光消費額を,国内外からの観光客誘致により引上げ,1兆円を目指す」という目標である。仮に,この構想により広島県で2,000億円のGDP増加を目指すとした場合,約4,000万人の総観光客数を増やさなければならない。現在の県内の総観光客数5,600万人に対して,ほぼ倍増を目指すことになる。
 それでも,この構想による景気回復の効果は,7,200億円のうち2,000億円であるから,景気回復に必要とされる規模の約4分の1の効果しか期待できない。
 つまり,どうも官僚的に達成可能な数字に小さくまとめていく結果,期待した効果が発揮できない,まさに悪循環の傾向があるような気がしてならない。
 そこで,まず,本県経済の不況の要因はどこにあり,今後,景気回復に向け,本県の産業特性を踏まえて,どのように効果的な産業政策に取組もうとしているのか,所見を伺う。

また,景気回復に向け,観光振興と地域経済の活性化に向けた切り札としている「海の道1兆円構想」について,具体的な数値目標等を,どのように考え,設定しているのか,併せて伺う。

答:
  本県産業は,欧米市場を中心とした自動車産業などグローバルな経済に強く連鎖した産業が多いため,この度の世界同時不況という急激な世界的な経済環境の変化によって,大きな影響を受けたものと考えております。
 経済のグローバル化が一層進展していく中で,本県経済も世界的な景気の動向に影響を受けないという訳にはまいりませんけれども,本県経済が将来にわたり持続的に成長していくためには,市場の成長性が高く地域経済への波及効果が期待できる産業や国際競争力のある産業の育成に加えて,強い中小企業を中心とする多様な企業からなるポートフォリオを構築していくことが重要であると考えております。
 こうした産業や企業が発展するためには,本県の多様な産業や優れた技術の集積,あるいは恵まれた自然環境など,本県の「力」と「宝」,あるいは「競争力」というものを活用していくことが必要でございます。

 このため,来年度は,

・将来の成長の芽となる企業の新たな取組を多角的に支援する広島版「産業革新機構」の設立準備や成長性の高い環境
・新エネルギー関連産業の研究開発拠点の整備など「産業革新に向けた支援」


 そして,

・瀬戸内の観光拠点機能の向上と周遊ルートの確立を図る取組や中国地域が一体となった外国人観光客の誘致をはじめとする「戦略的な観光振興」
などを実施してまいる所存でございます。

 こうした「新たな経済成長への挑戦」によって,社会経済情勢の変化や国内外の多様な市場ニーズに柔軟に対応できる力強い産業構造の構築を目指してまいります。

 また,「瀬戸内 海の道一兆円構想」に掲げました1兆円という数字は,瀬戸内海全体の集客力等を向上し,観光消費額,あるいは経済波及効果を高めたいという思いを示したものでございまして,企業の売上目標のように個別に積算をする数値目標とは趣旨が若干異なるものと考えております。
 従って,ご指摘のとおり,達成可能な数値目標といったことに捉われるのではなくて,自由闊達に議論,検討して,様々なアイデアを活かしながら構想策定を進めて参りたいと考えております。

3.債権放棄について
担当部局: 企画振興局 答弁者: 知事
問:
 私企業としての顔を持つ,HAVの経営陣には,私企業としての経営責任を果たす必要性がある。この際,清算して徹底的に,この会社,引いては事業全体の問題点をあぶり出していくという方向性もあるのではと思う。
 しかし,県出資の第三セクターとして県の顔,公共性の顔を持つHAVは,公共の損害を最小限に抑える観点から,今回の債権放棄はやむを得ないとも考えられる。
 企業経営者としての経験もある知事として,独自の経営責任論,経営哲学からすると,経営陣の責任と,県の責任をどのように認識しているのか伺う。

 その上で,今回のHAVの企業再生にあたり,厳しい経済不況の中にあって,どのような経営見通しを策定し,どのような新体制により再生を図ろうとしているのか,その内容により,知事の考える経営責任を果たすことが可能なのか,併せて伺う。

答:
  広島エアポートビレッジ開発株式会社は,これまで経営努力を続けて参りましたけれども,金融危機による急激な景気後退に伴って,昨年の春以降,預託金の返還請求が予想を超えて増加をしたため,民事再生の申立に至ったものでございます。

 会社再生の方向としまして,できるだけ弁済率を引き上げるため,


・公共性のあるホテルは広島空港ビルディング株式会社に売却をして事業を継続するということ

・ゴルフ場は営業を継続してその収益により,弁済原資を確保する
としておりまして,これを満たすものとして現在の再生計画案がございます。

 今後,同社は一層の経営改善を図って収益を増加させ,10年間で3億円余の弁済原資を確保する経営見通しを立て,再生計画案に位置づけております。

 また,同社の経営陣は現在民事再生手続の遂行に全力をあげて取り組んでいると認識しておりますが,今後,再生計画案が裁判所の認可を得て確定して,会社の再建の見通しがついた段階で,同社は経営責任に鑑み役員の退任と縮減を行って,会社組織の一新を図った上で新しい経営体制に移行する見込みでございます。

 一方県としては,法的には出資の範囲内で責任を負うものでございますけれども,計画策定時から関与してきました同社がこのような事態に至ったこと,そしてこのたび県の債権を放棄するに至ったことについては,申し訳なく思っております。
 出資金や貸付金の多くを失うこととなりますけれども,今後再生計画案が着実に実行されることにより,貸付金を最大限回収していくことが,県民の皆様に対するこれからの県の責務であると認識をしております。

4 広島市との政策調整について
 
(1)福祉医療費公費負担事業について
担当部局: 健康福祉局 答弁者: 副知事
問:
 福祉医療費公費負担事業について,知事は広島市に対する補助率の見直し提案を白紙に戻すとされた。
 結局は,広島市の説得に失敗したわけであるから,考え方を変えるべきである。
 広島市側の主張である「市内の住民は他の市町と同様に県税を納付している,合理的な理由もなく差をつけた対応」だという批判に対して,県として,どう整理し,反論しているのか。単に政治決断ということで,片付けられる問題だとは思わない。この間の県の理屈,解釈等を整理していただきたい。

 私は知事の決断を高く評価しているので,この件については,交渉の最前線に立たれた副知事に伺う。

答:
 福祉医療費公費負担事業を含め,福祉分野における施策につきましては,県と政令市であります広島市が同等の権能を有しているという基本的な考え方に,変わりはございません。

 次に,中原議員お尋ねの広島市の県税に関する主張でございます。県税につきましては,広域行政を担う自治体として,県が,各市町の特性や役割を踏まえまして,県勢の発展や県民全体の生活の維持・向上といった様々な視点から,総合的な判断に基づいて,財源として各事業に充当しているところであり,税収と行政サービスが直接連動するものではないと考えております。

 このような考え方に基づきまして,県といたしましては,広島市に関する様々な事業につきまして,これまでも,適切に予算措置を講じてきたところでございます。

 今回,広島市に対する提案を一旦白紙に戻しましたのは,

・県と市の意見の隔たりが依然として大きく,現段階で合意することが困難でありますこと

・また,ギリギリまで交渉は行いましたけれども,今年度の額を確定させます2月補正の時期が目前に迫っていたこと

・したがいまして,対立したままでは,県と市の予算に食い違いが生じてしまいますこと


 こういったこと等を鑑みまして,この際,提案を撤回した上で,改めて協議を行う方が適切であるとしたものでございます。
 今後,十分に検討を進めまして,再度,広島市と話し合いを進めて参りたいと考えております。
 
 (2)出島地区廃棄物処分場について
担当部局: 環境県民局
土木局
答弁者: 環境県民局長
問:
 出島地区廃棄物処分場については,整備の遅延等,多くの問題があり,埋立護岸整備は,工事費の増加に伴う,広島市負担金の問題があった。県は,この問題の要因について,「全国初の最先端技術による新工法の採用により,万全を期した遮水性確保には,施工手順などの見直しが必要となった」ことを挙げている。
 しかし,私はそのこと以上に,問題の起こった要因としては,工期が当初計画よりも,4年強も遅れていることにあると考えている。出島地区処分場への廃棄物の受入に必要な,五日市積出施設の設置も遅れており,出島地区処分場の供用開始の見通しは極めて不透明である。この不透明感により, 五日市,出島の周辺の地元住民は,不安な日々を余儀なくされている。

出島地区廃棄物処分場の,今後の見通しであるが,埋立護岸の整備状況,五日市積出施設の設置も含めた出島地区処分場の供用開始スケジュール,また,地元住民との間に締結した環境保全基本協定書の「廃棄物の受入の計画期間は,受入開始から10年間とする」との規定を守る気があるのかどうかについて伺う。

答:
 埋立護岸の整備につきましては,すでに工事の最終段階を迎えておりまして,今後,遮水シートの敷設,保護といった遮水工事などを完了させることにより,平成22年度末には完成することとしております。
 この処分場へ廃棄物を搬入するために必要となります,五日市積出施設等の廃棄物の受入関連施設につきましては,出来るだけ多くの関係者の御理解を得て着工したいと考えております。

 このため,引き続き,地元の皆様の御理解を得るために最大限の努力を行い,出島処分場が早期に供用開始できるよう,作業を進めて参りたいと考えております。

 また,廃棄物受入の計画期間につきましては,地域の代表者の方々と締結いたしました環境保全基本協定におきまして,「受入開始から 10年間とする」ことといたしておりまして,この協定の内容を尊重して参りたいと考えております。

 (2) 出島地区廃棄物処分場について( 再質問 )
担当部局: 環境県民局
土木局
答弁者: 環境県民局長
問:
 新知事になられたということで,もう一度確認をしたいと思う。出島の廃棄物処分場は,工事が遅れに遅れて,「本当に10年で終わってくれるのだろうか」という不安がある。10年間が早く通り過ぎてくれて,その間,ちょっと目をつぶっていれば,気が付いたら,すごくきれいな公園と緑地ができている。そういう思いで,住民はこの問題に取り組んでいるということをぜひ御理解をいただきたいと思う。

 そこで,簡単な質問であるが,環境保全基本協定書というのは,藤田知事名である。知事が代わって,やはり私は,まず知事が直近の協議会に出席されて,皆さんの声をしっかり聞いて,新しい協定書を作るぐらいの誠意を見せていただきたいと思う。現地・現場主義で,鞆の浦には行かれるが,一番反対住民の多いところには行かれないという姿勢が,正に今,問われていると思う。

 次の協議会に行くか行かないか,知事の決意を,この問題は大変な経緯があったということも踏まえて行くか行かないか,イエスかノーか伺う。

答:
 私としましてはですね,現在のこの協定書の内容を尊重して参りたいというふうに考えておりますけれども,次の協議会に出席するか否かという点についてはですね,私自身も現時点で多少,判断をしかねるところがございますので,よく検討した上で,出席についてはですね,決めていきたいというふうに考えております。

5 福祉政策について
 (1)障害者自立支援法の現行制度について
担当部局: 健康福祉局 答弁者: 健康福祉局長
問:
 障害者自立支援法については,新内閣において,この法律を廃止し,利用者負担について,応能負担を原則とした新たな制度の創設を,平成25年夏をめどに検討されている。
 本県としても障害者自立支援法の現行制度について,利用者や施設の実態を検証し,今後の施策提言につなげて行く必要がある。

 この制度は,平成18年10月から本格実施しているが,サービスの給付と利用者負担の状況は,どうなってきているのか。障害福祉サービスの給付量,県負担が増えているのか,減っているのか。そして最も大事な利用者負担がどうなっているのか。さらには通所・入所サービスを提供している法人や作業所の経営状況はどうなったのか。現行の制度の総括を伺う。

答:
 障害者自立支援法は,平成18年10月から本格実施されたところですが,障害福祉サービスの給付の推移のうち,一月当たりの平均利用者数につきましては,現行制度が導入された平成18年度と今年度の8月までとを比較いたしますと,50%増の15,865人となっております。

 また,県の財政負担につきましては,通年実施となりました平成19年度と今年度とを比較すると,15%増の60億円余となる見込みでございます。

 次に,利用者負担につきましては,平成18年10月の一人当たりの月額平均負担額は8,204円でしたが,特別対策による軽減措置を講じたことによりまして,平成21年8月には2,482円となり,負担率も5.3%から2.0%に低下しております。

 さらに,事業者の経営状況につきましては,障害福祉サービス報酬の支払方式が月額制から日額制へ変更されたことなどにより,県内すべての事業所で,収入が減少しましたことから,国と連携し,特別対策による減収補填措置や,報酬の大幅改定など,経営の安定化を図る措置を講じてきたところでございます。
 現行制度には,利用者負担のあり方や報酬の支払方式などの課題が指摘されている一方で,障害者が地域で安心して暮らせる社会の実現を目指すという理念につきましては,重要であると認識しております。


 現在,国におきまして,障害者に係る制度改革が進められており,県といたしましては,こうした点も含め,制度設計の過程で,機会を捉えて,意見を述べて参りたいと考えております。

2)低所得父子家庭への支援について

担当部局: 健康福祉局 答弁者: 健康福祉局長
問:
 近年の家族形態の多様化,非正規雇用者の増加,不安定な経済・雇用状況等を背景として,生活に困窮する父子家庭が増加している中,父子家庭を支援するため,先月12日に,「児童扶養手当法の一部を改正する法律案」が閣議決定された。
 改正案の内容は,「低所得の父子家庭10万世帯に対して,所得に応じて,1ヶ月あたり1〜4万円を支給する」というものである。

 県内の父子家庭の実態,この法案が成立した後の県の対応等について伺う。

答:
  父子家庭は,国の調査をもとに推計しますと,県内に約4,500世帯あると考えられます。また,母子家庭と比較して経済的基盤はあるものの,育児や家事等に伴う負担が大きいことから,県といたしましては,市町が行う家庭生活支援員の派遣に要する費用の助成などを通じ,生活面での支援を行っているところでございます。

 しかし,近年の厳しい雇用情勢の中,父子家庭は,低所得の母子家庭には支給される児童扶養手当が対象とされていないことから,経済的に厳しい状況にある家庭が増加していると考えられ,課題であると認識しております。
 このような中,国におきまして,低所得の父子家庭に対する新たな経済的支援策として,児童扶養手当の支給対象に父子家庭を加える法案が,先月,閣議決定されたところでございます。

 県といたしましては,本法案が成立され次第,対象の父子家庭の方々がもれなく,速やかに申請の手続きが取られますよう,制度改正に関する市町説明会や広報活動などの諸準備を早めに進めることによりまして,万全を期して参ります。

3)授業料の滞納に係る生活福祉資金の取扱について
担当部局: 環境県民局
健康福祉局
答弁者: 環境県民局長
問:
  高等学校授業料の滞納問題に係る新制度は,全国の社会福祉協議会の生活福祉資金貸付制度を,特例的に過去の滞納分にさかのぼって貸し付け,授業料の滞納で3月末に卒業できない子どもたちを卒業できるようにする特例的な運用である。

 21年度限りの事業であるため早急な対応を要する,この制度を積極的に活用するため,特に,私立高校については,授業料の滞納の状況や授業料滞納による出席停止や退学処分の状況を早急に把握し,制度の周知を図ることが必要ではないか。私立高校,高校生及び保護者に対しての周知及び実態把握の状況について伺う。

答:
  県では,これまで各私立高等学校に通う低所得者世帯の生徒が学業を継続できるよう,授業料の軽減措置などを実施いたしております。
 この度,国におきまして,授業料の滞納により学業を続けることが困難な生徒に対しまして,生活福祉資金貸付制度を特例的に高校授業料の滞納分にも適用されることとなったところでございます。

 県といたしましても,生徒の学業継続のため,この制度の活用が重要であると考えておりまして,必要とする生徒・保護者が利用できるよう,各私立高等学校に対して,数度にわたり通知を行い,周知を図るとともに,各学校の授業料滞納による出席停止などの状況の把握とその対応を調査しているところでございます。

 今後,本制度の実施主体であります県社会福祉協議会と十分な連携を図り,早急に,制度が活用されるよう努めて参ります。

4) がん検診受診率の向上について
担当部局: 健康福祉局 答弁者: 健康福祉局長
問:
 広島県建設労働組合は,組合員数は,約1万5千人あまりで,組合が運営する建設国保の被保険者は約3万人にのぼる。建設国保組合に係る特定健診に対する支援は任意であるが,国は2010年度において,前年度に引き続き,市町村国保との均衡を図る観点から,費用の3分の1の補助を予算案に計上しており,すでに都道府県単位で建設国保組合を設置している22団体のうち,2008年度予算において9団体が補助を行っている。

  国の方針,また他の都道府県の対応から言っても,本県が広島県建設労働組合に対して特定健診・保健指導に対する助成を行うべきだと考えるが,見解を伺う。
 さらに,22年度の県予算案で,がん検診受診率向上への取組として,建設国保のほか3つの組合に対して支援するため,500万円を計上しているが,被保険者のがん検診受診率向上を目指すのであれば,その被保険者数に応じて,この予算を配分するのが,目的に合致した合理的な方法だと思う。

 しかし,被保険者数が圧倒的に少ない他の組合,医師・歯科医師・薬剤師の組合と均等配分をすることになっており,あまりにも不合理ではないかと考えるが,所見を伺う。

答:
  特定健診・特定保健指導は,「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づき,各医療保険者において実施が義務付けられており,基本的には保険者がそれぞれに取り組むべきものと考えております。

 このうち,市町国保に対しましては,建設国保組合などと異なり,県費負担が国民健康保険法によって義務付けられておりますことから,健診等の費用の一部を助成しているところでございます。

 また,がん検診は,健康増進法に基づき市町の事業として位置付けられているほか,国保組合では,国民健康保険法で保健事業の一つとして任意に実施することとなっておりますが,県内のいずれの国保組合も受診率が低い状況にあります。
 このため,県といたしましては,各国保組合が行う組合員への受診の働きかけを支援するため,普及啓発に係る費用として一定額を助成することとしたものであります。

 県では,「広島県がん対策推進計画」において,平成24年度のがん検診受診率を50%以上とすることを目指しており,今後,この助成の成果も検証しながら,がん検診の受診率向上に向けて適切に対策を講じて参ります。

6 広島港周辺の整備について
担当部局: 土木局 答弁者: 土木局長
問:
 県は,「広島港宇品地区から出島地区にかけて,水際空間を散策できる遊歩道を軸にして,各地区の特性を活かした賑わいづくり等を計画的・段階的に行う」としているが,具体的には,22年度はどうするのか,特に宇品中央地区の県営上屋4号・3号を活用した賑わい空間を創出する計画について,その見通しを伺う。

また,本県の近代化遺産にも登録されている旧広島水上警察署の現状は放置されたままで,公物管理という面からも問題だと思う。保存活用に向けて,具体的に一歩を踏み出すべき時期に来ていると思うが,見解を併せて伺う。

答:
 広島港の宇品から出島に至るウォーターフロントにおきましては,平成17年に策定した「魅力ある港賑わいづくりプラン」に基づき,利用水準の低い既存の上屋の利用転換を図るなどにより,臨海部の優れた景観を活かした賑わい空間づくりを進めております。
 この内,宇品中央地区におきましては,すでに既存の上屋を活用した物販施設,集客施設などの整備が進められ,また,隣接する県営3号及び4号上屋につきましても,引き続き利用転換を図るため,来年度には,公募により開発事業者を選考する予定となっております。

 このように,本地域内の賑わい空間づくりには,民間の活力を最大限活用することとしておりますが,「魅力ある港賑わいづくりプラン」が示す整備の方向へと適切な誘導を図るため,現在,地区毎のデザインコンセプトや整備手法などを内容とする地区整備方針を策定しているところでございます。

 なお,ご指摘の旧広島水上警察署庁舎につきましては,地区整備方針の策定過程において,広島市と共に,そのあり方について検討することと考えております。