1.総合計画策定の必要性について
担当部局: 政策企画局 答弁者: 知事

問:
 地方自治法第2条では,市町村が基本構想を定める際には,議会の議決が必要とされている。これは,地方自治の本旨である住民自治を実現するために,住民に選ばれた議会の議決を当然得るべきであるということだと思う。

 一方で,都道府県の基本構想,総合計画は,議会の議決を要件としていない。これは,各市町村の総合計画と矛盾するものは許されず,市町村の計画を優先すべきとの考え方を反映したものだと思う。
 その意味から,県の総合計画はそれほど重要度は高くないのではないか。実際,高知県と鳥取県では長期計画は策定していない。
 広島県で,平成7年に長期総合計画を策定する際には,4回の審議会と7回の計画部会,4地域での公聴会を開催した。誠に手間をかけて作っているが,私は,これは次期知事の仕事だと思う。つまり,ルーティンワークとしてやらなければならない緊急性と必要性があるとは思えない。次期知事が決まってからでも計画策定は遅くなく,今やらなければならないとは思えない。
 総合計画策定に関して,現時点での必要性について,知事の認識を伺う。

答:
 本県を取り巻く社会経済環境は,少子・高齢化や経済活動のグローバル化,高度情報化が進展するとともに,分権改革の推進に伴う国・地方を通じた役割分担の見直しが行われるなど,かつてない大きな変化に直面致しております。

 こうした状況の中で,県勢の発展につながる施策の展開を図っていくためには,県政運営の基本方針となる総合計画が,必要不可欠であると考えております。
 現在の,第四次長期総合計画及び県政中期ビジョンの計画期間が,来年度末をもって終了致しますことから,平成18年度からの施策や事業を円滑に推進していくため,速やかに新たな総合計画の策定に着手していくことが必要であると考えております。
 更に,計画の策定に当たりましては,県民の皆様や市町,企業などから幅広い御意見をお聞きし,また,総合計画審議会において審議を深めていただくための,十分な期間が必要となります。
 このため既に,今年度において,現計画におけるこれまでの取り組みの成果や今後の課題などについてフォローアップを行っているところであり,来年度早期に,総合計画審議会を設置し,精力的に御審議をいただきながら,年度末を目途に,新たな総合計画を策定して参ります。

2.県の事務権限移譲の規模とその財源措置について
担当部局: 総務企画部
政策企画部
答弁者: 知事

問:
 平成
17年度当初予算において,公共事業について,道路の改築及び維持修繕に係る移譲交付金として,三次市,安芸高田市,江田島市に対して577百万円を措置している。これらは,法的には権限と責任はあくまで県にあることから,権限移譲とは名ばかりで,単なる市町への委託的性格が極めて強いものと言わざるを得ない。法律や国の補助金制度のしばりがあって,県から市町への本来の権限移譲は,実際は困難ではないかと思う。
 さらに,この権限移譲という考え方は順序が逆ではないかとも私は考えている。県の固有の事務はこれだけで,あとは市町で担うことになると,県がまず具体的に示していく必要があると思う。
 
 そこで具体的に,県固有の事務というのはどのくらいになるのか,市町へ移譲する事務というのはどのくらいの規模になるのか。県全体の事務量あるいは職員数でいうとどれくらいになるのか,その全体像について伺う。併せて,市町へ移譲される事務に係る財源措置は,どういう形で行われるのか,伺う。

答:
 国,都道府県,基礎自治体の役割分担については,国の三位一体改革や第28次地方制度調査会における都道府県再編の議論など,国と地方を通じた抜本的な制度改革の議論が進められている今日,ご指摘の県固有の事務について,現段階で確定的に申し上げるのは困難でございます。

 こうした中,本県におきましては,昨年11月に策定しました「分権改革推進計画」において,基礎自治体が,福祉・保健,まちづくりなど住民に身近な行政サービスを,自主的,総合的に提供できるよう,今後5年間で,できるかぎり多くの事務・権限を移譲する方針のもとで,具体的な移譲項目を定めたところでございます。
 移譲する事務・権限の規模につきましては,法定移譲事務も含め,対象事務のうち制度上の制約のないものが全て移譲された場合,500人分に近い業務量と試算を致しております。
 移譲する事務・権限に係る財源としては,生活保護や建築確認など,法令の規定に基づき市や町に権限が移行する法定移譲事務につきましては,国から市や町に地方交付税が措置されます。
 また,県が事務処理特例条例により,権限移譲を行うものにつきましては,地方財政法の規定に基づき,必要な経費の財源措置を講ずることとしております。

 具体的には
@ 農地転用などの許認可事務等については「移譲事務交付金」
A 県道の維持修繕など公共事業については「公共事業移譲交付金」 で措置いたします。
 そのほか,特別児童扶養手当の認定事務など国庫補助金が県に措置される事務を市や町に委託して実施する場合には,委託料を措置するなど,移譲事務の実施に支障が生じないよう,適切な財源措置を講じて参ります。

3.道州制に係る政令指定都市の位置づけについて
担当部局: 政策企画局 答弁者: 知事

問: 
 知事は,新たな広域自治体の姿として,できるだけ早期に「道州制」をめざすとしているが,政令指定都市である広島市は今のままでいいのか,という点に関して知事の考え方が伝わってこない。

 政令指定都市は,他の基礎自治体と違い,県と同等の権限を有しており,他の市町村とは位置づけが異なる。第28次地方制度調査会においても,政令指定都市を,道州の下に置かれる市に関する特例と位置づけるのか,道州の区域から外れ,道州とみなされる特例的な市を設けることとするか議論されている。もし,道州と同格と位置付けられるのであれば,「州都を広島に」という議論は無意味になる。
 県の分権改革推進計画では,政令指定都市のあり方について,現行の都と特別区の関係も参考にしながら,新たな制度設計についても議論する必要があると指摘をしている。また,道州の自立に向けて,広域的かつ戦略的な施策を展開する必要性から,空港・港湾,道州内の主要都市を結ぶ幹線道路網についても,道州が主体的に担う必要があるとし,現在,政令指定都市が有する道路管理権限の内,広域的なネットワークを形成するものは,道州へ一元化するほうが効率的であるとしている。
 大阪府では,大阪市の分割化を提言しており,大都市は,住民自治の理念に反するとの反省もそこにはあるようである。これは広島市においても同じようなことが言えるのではないか。
 道州制の実現に向け,具体的な取組みを進める上で,道州と政令指定都市の位置づけを明らかにし,広島市と議論すべき時期に来ていると思うが,見解を伺う。

答: 
 現在,国の地方制度調査会では,道州制における大都市制度について,現行の制度とするのか,あるいは,道州の区域から完全に分離独立した,いわゆる「都市州」を設けることとするのか,議論が行われております。
 政令指定都市を都市州とすることについては,

・ 社会経済活動の広域化や行政の効率化の視点から都道府県区
  域の拡大が求められ
る中にあって,都道府県よりも小さな都
  市州を設置することは,こうした要請に合致
しないこと
・ 人口や,産業経済等の集積する政令指定都市が分離独立すれ
  ば,地域ブロック全体
の自立に向けた広域的かつ戦略的な施
  策の実施が困難となること

・ 環境保全,防災,交通ネットワークや水資源問題など,周辺
  地域との相互依存関係

 が強まる中にあって,すべての広域的課題を政令指定都市自ら処理することは困難であることなど,多くの問題があると考えております。
 このため,県と致しましては,全国知事会道州制研究会において,本県の分権改革推進計画を示し,本県の考え方を明らかにしているところでございます。
 今後は,全国知事会等における検討を促進するとともに,県としても国に対して意見・提言を行って参りたいと考えております。

4.出島埋立地区廃棄物処分場設置事業について 
担当部局: 環境局 答弁者: 環境局長

問:
 平成15年6月に県は,環境保全基本協定書を地元住民と締結した。事業者である県の責務を明確にし,この協定に基づき,誠意ある対応を行うことは当然であるが,平成18年度末にも予定されている廃棄物の搬入に当たっては,住民の不安を解消すべく,万全を期す必要があると思う。
 そこで,現在も継続して開催されている連絡調整協議会の開催状況について伺う。
 また,廃棄物の搬入方法については,五日市地区に廃棄物の積替保管施設を,出島地区処分場に揚陸施設を整備し,五日市から海上搬入することとなっている。
 廃棄物処分場が設置される出島地区の住民の理解は当然のことながら,廃棄物を積替保管する施設が設置され,広島市や周辺市町からの廃棄物が集まる五日市地区の住民への説明や理解を得ることを忘れてはならない。
 私は,この積替保管施設も廃棄物処分事業を構成するものであり,設置される五日市地区の住民の理解を得て,事業を進めなくてはならないと考えている。
 事業者である県は,誠意をもって対応すべきと考えるが,まず,五日市の積替保管施設の設置者は誰か,設置にあたっての許可権者は誰か,そしてその許可権者は設置者に対して許可しない,不許可の決定を下せるのか伺う。さらに,五日市地区の住民の理解に向けて,何をしてきたのか,また,今後,どうするのか伺う。

答:
 出島処分場事業連絡調整協議会は,これまでに16回開催し,事業の進捗状況や環境調査結果の報告に加え,先進地域の視察や協議会の場で提案のあった事項について,最新の知見をもとに協議を進めております。

 また,広報誌の回覧や工事見学会の開催などを通じ,地域に開かれた事業となるよう取り組んでいるところでございます。
 次に,五日市地区に計画しております廃棄物積出施設は,廃棄物を収集・運搬するための保管施設でございまして,事業の実施主体である財団法人広島県環境保全公社が広島市長から産業廃棄物収集運搬業の許可を受ける必要があります。
 この許可に当たっては,廃棄物処理法に定める基準に基づき広島市長が判断されることになります。
 積出施設設置につきましては,地域の理解と協力が不可欠であり,広島県環境保全公社と共同して,積出施設計画地周辺の環境調査を行ったところでございます。
 今後は,この調査結果に基づく環境保全措置を含め,事業計画を地域の皆様方へ説明し,理解を得ながら事業を進めて参りたいと考えております。

5.特別養護老人ホームの入所待機者数について 
担当部局: 福祉保健部 答弁者: 福祉保健部長

問:
 先日
222日の日経新聞に,厚生労働省が全国調査した特別養護老人ホームの入所待機者数の記事がありました。この中で,全国では広島県と鹿児島県だけが未調査というふうになっております。
 介護保険事業計画の策定において,もっとも重要なこういった数字が未調査というのはどういうことなのでしょうか。私も委員会等で何度かお聞きしましたが,その際にも正確な数字は出てきませんでした。介護保険施設の整備計画にも影響する大事な数字であります。もう一度,現状をお聞かせいただきたいと思います。

答:
 この度の厚生労働省の調査は,昨年
11月にアンケート方式で実施され,調査目的も明示されないまま,即日,回答を求められたものであります。このため,公表された数値は,各都道府県において,把握の時期や方法などが異なっております。
 本県におきましては,把握の時期が直近のものでなく,また,推計したものであることから,把握していないと回答したものであります。
 現在,把握しております数値は,第2期介護保険事業支援計画の策定に当たり,平成141月に行いました介護保険利用者実態調査をもとに,県内の特別養護老人ホームの入所申込者数を推計したものであります。
 これによりますと,県全体の入所申込者は4,272人で,そのうち,早期に入所が必要と見込まれる者は2,093人となっております。
 平成>17年度の第3期介護保険事業支援計画の策定に当たりましては,市町と連携し,より正確な入所申込者数などの把握に努めて参ります。

6.社会福祉法人における情報公開について
   (1)社会福祉法人の指導監査結果等の公開について 
担当部局: 福祉保健部 答弁者: 福祉保健部長

問:
 昨年の4月,社会福祉法人戸河内松信会における多額の不明繰越金が判明し,県は,法人運営の適正化を図るために,様々な再発防止策を打ち出した。

 その一環として,社会福祉法人への指導監査で文書による指摘をした法人と施設の名前を17年度から公開する方針を,昨年の9月に明らかにした。
 福祉サービスを利用する側にとっては,適正な法人運営や会計経理が行われていることは勿論のこと,利用する施設における入所者の処遇や苦情の解決などが行き届いているのかが,気になるところではないかと思う。
 指導監査結果等の公開に当たっては,監査項目や文書指摘の基準も充実していくとともに,利用する側には分かりやすく,また,経営者側には早急な改善を促すものにしていかなければならない。
 そこで,どういう形で公開を行うのか,現在の検討状況について伺う。

答:
 社会福祉法人における不祥事を契機として, 再発防止を図るため,指導監査マニュアルの見直しなどとともに,社会福祉法人及び施設の監査結果を公表することとしたところであります。
 具体的には,県の情報公開条例や他県等の実施例を踏まえながら,法人の運営や施設における入所者処遇などについて,是正改善が必要として文書指摘した事項を公表する方向で検討しているところであります。
 なお,平成17年度の監査実施分から,県のホームページへの掲載などにより,公開したいと考えております。
7. (2) 福祉サービスにおける第三者評価事業について 
担当部局: 福祉保健部 答弁者: 福祉保健部長
問:
 法人自らが情報公開に努めることは,福祉サービスの質の向上のためには是非とも必要であるが,それに加えて第三者評価についても進めていく必要がある。
 県は,これまでも介護サービスにおける第三者評価のあり方検討から始まり,モデル事業の実施などを行ってきたが,どのような対策を講じようとしているのか。第三者評価事業のこれまでの取組みと併せて,この事業の有用性及び今後の取組みについて伺う。
答:
 福祉サービスの第三者評価事業は,福祉サービス事業者が提供するサービスの質の向上と,利用者のより良いサービスの選択に資するものであり,県としては,その普及促進に取り組む必要があると考えております。
 このため,県では,現在,「介護サービス質向上委員会」を設置し,平成17年度から本格的に実施することが義務付けられている,認知症高齢者グループホームの第三者評価や,平成 18年度から導入が予定されている,介護サービス情報の公表制度の実施に向けて準備を進めているところであります。
 一方,民間におきましても,平成14年度から県社会福祉協議会において,独自の評価基準に基づく第三者評価の取組みが先駆的に進められているところであります。
 今後,介護サービス分野における取組みや,県社会福祉協議会のこれまでの成果,また,現在,国において進められている具体的な基準づくりなどの動きを踏まえながら,福祉サービス全般にわたる第三者評価事業の進め方について検討して参ります。
8.県立身体障害者リハビリテーションセンターについて
   (1) 高次脳機能障害対策について 
     ア 高次脳機能障害対策に係るモデル事業について
担当部局: 福祉保健部 答弁者: 福祉保健部長
問:
 県は,国のモデル事業を受け,県立リハセンターを地方拠点病院に指定し,16年度からはこれまでの成果を踏まえ,各種制度を活用したサービス提供を行い,全国に普及可能な支援体制の確立を図るべく,引き続きモデル事業に取り組んでいる。
 このモデル事業は2か年で17年度が最終となり,18年度以降は一般対策としての支援制度を構築しなければならないが,これまでの取組みの成果と来年度の取組み内容について伺う。
答:
 高次脳機能障害につきましては,医療提供体制の充実や,社会復帰に向けた支援体制の構築を図ることにより,障害者の方々が地域で安心して生活できるよう,平成14年からモデル事業を実施しているところでございます。
 昨年度までに,障害者の実態の把握,診断や障害評価の基準の作成,訓練や社会復帰に向けた標準的プログラムの作成などの成果をあげることができました。
 今年度から開始した新たなモデル事業では,これらの診断基準やプログラムを活用し,「支援コーディネーター」による社会復帰のための計画策定や調整などの相談・支援,国の支援プログラムに基づくリハビリテーションや就労訓練の実施,保健・医療・福祉関係者や県民に対する普及啓発などに積極的に取り組んでおります。
 来年度は,モデル事業の最終年度であることから,国の動向を踏まえつつ,今後の高次脳機能障害対策のあり方について取りまとめを行いたいと考えております。
     イ 高次脳機能障害対策の充実について   
担当部局: 福祉保健部 答弁者: 福祉保健部長
問:
 私は,17年度までの4年間の取組み成果を受け,さらに充実させて,全国に先駆けた取組みを進めていくことが大事であると考える。こうした県が先導性を発揮する公共福祉の分野は,積極的に取り組んでいくべきである。
 そのためにも,県立リハセンターを中四国における高次脳機能障害対策の拠点として位置づけ,今後も永続的な取組みができる体制づくりを行う必要があると思う。
 ここまでの取組みの蓄積を強みとして,県立リハセンターの中でも独立した診療科などの組織を設けることも検討しても良いのではないかと考えるが,所見を伺う。
答:
 県立身体障害者リハビリテーションセンターにおきましては,モデル事業における支援拠点機関として,高次脳機能障害対策に取り組んでおります。
 モデル事業終了後の高次脳機能障害に対する取組みにつきましては,モデル事業のこれまでの成果や,国の方針を踏まえながら,来年度,検討して参ります。
9. (2) 県立身体障害者リハビリテーションセンターにおける指定管
      理者制度の導入について 
担当部局: 福祉保健部 答弁者: 福祉保健部長
問:
 県立リハセンターを含め県立の社会福祉施設については,これまで広島県福祉事業団に委託を行っていたが,新たな公の施設の管理方式として指定管理者制度が創設され,18年度からの導入について検討が行われている。
 県立リハセンターについては,高次脳機能障害対策をはじめ多くの分野で県内若しくは中国地方の先進的な取組みを行っており,そうしたスタッフなど人材も貴重である。それが,福祉事業団以外に指定管理者が選定されるような事態になれば,これまで蓄積された多くのノウハウが無駄になってしまうのではないかと思う。
 医療センターのみではなく,肢体不自由児施設や重症心身障害児施設なども併設され,総合的な取組みが行われており,管理者が変わることは,入所者にもこれからの処遇について不安を抱かせることにもなる。
 県立リハセンターの18年度から導入予定されている指定管理者制度について,どこまで検討が進められているのか伺う。
答:
 県立身体障害者リハビリテーションセンターなどの指定管理者制度の導入につきましては,効率性に留意しなければならないことはもちろんでありますが,このような多くの障害者を受け入れ,様々な訓練や支援などを行っている施設につきましては,利用者の安定した処遇を如何に確保するのかといったことなどの課題があります。
 このため,来年度は,関係者の御意見を伺いながら,こうした施設の特性を勘案しつつ,県立社会福祉施設の将来的な在り方とそれに適した運営方法について検討して参ります。
 また,地方自治法上,平成18年9月までに指定管理者制度を導入しなければならないことから,指定管理者の選定方法につきましてもこれとあわせて検討して参ります。
10.小児難病対策について
   (1) 小児特定疾患医療に係る申請について 
担当部局: 福祉保健部 答弁者: 福祉保健部長
問:
 小児特定疾患に対する医療費の公費負担について,これまで県は,国の対象年齢18歳未満に対し20歳未満までとし,給付対象についても,ぜんそくを除き国が入院のみとした疾病についても通院も合わせて給付をするなどの単県の上乗せ措置を行ってきました。
 この度,国において,今年の4月から制度が改正され,これまで単県で上乗せ給付していた部分が国の制度に取りこまれたことを理由に,単県制度を廃止する方針を出されました。確かに,対象年齢,給付対象については,国の制度が改善されたと思われますが,併せて,患者の保護者の所得により医療費の一部負担の制度が盛り込まれており,広島県における対象者にとっては,医療費の負担だけが重くのしかかることになります。
 また,国の制度改正によると,自己負担には所得に応じて限度額が設定されており,負担額は一定額に抑えられるものの,申請に当たって税情報等が必要となることから,今までの医療機関の代理申請から,患者の保護者の申請に変更となります。
 広島県では現在まで,他県が本人申請へと切り替える中,代理申請を維持し,他県からこられた保護者の方々から高く評価されておりました。難病に苦しむ子どもさんから少しでも目を離したくない,という保護者の方々の願いに応えてきたわけです。本人申請ということになりますと,保健所や市役所に行く回数も増え,大変な負担になります。
 こうした中,関係者からは制度改正に対してサービス後退との不満や医療費の一部負担に対する単県での措置についての要望の声もあがっております。
 そこでまず,小児特定疾患医療に係る申請に伴う患者の保護者の手間の負担軽減について,どう考えておられるのか,お聞きいたします。
答:
 小児特定疾患対策につきましては,制度の安定化を図るため,保護者等の所得に応じた自己負担が導入されます。
 導入により,申請時には源泉徴収票などの税額を証明する書類が必要となるため, 個人情報保護の観点から,保護者等が年に1回,郵送等の方法で申請することとなりました。
 その際,申請者の負担をできるだけ軽くする観点から,申請書類を医療機関に配置するとともに,県の ホームページからも申請書類や必要な情報を入手できることとしております。
 さらに,更新に当たっては,申請書に予め,住所,氏名,医療保険種別等を記載し,保護者等に対し,送付することとしております。
 県といたしましては,制度改正後も引き続き患者,保護者に対し情報提供や相談を行うことなどにより,保護者等が円滑に申請することができるよう,適切に対応して参ります。
(再質問)

問:
 まず,先ほど部長が答えられた小児難病の申請についてですが,患者団体から非常に強く要望がある点なので,あえて,もう一度お聞きします。

 新たに予算を付けろとか,あるいは,新たに違う手続きをしろと言っているのではなく,今まで広島県だけが代理申請を維持してきたのですから,今までどおり広島県は代理申請をやっていくことを考えてよいのではないかという趣旨でお聞きしたのです。
 私は,10人や20人の話をしているのではない。小児難病の子供さんというのは,県内で3,700人,広島市も入れると7,000人近い子供さんが入院や通院をされています。(※ 実際の人数9,081人(広島市を除くと5,324人))また,実際に申請をされるのは,お父さん,お母さんですから,今申し上げた7,000人の3倍,約20,000人近い方々が,代理申請を維持するというだけで喜ばれます。
 所得の情報が必要というお話がありましたけれども,私は,本人の承諾があれば所得情報を出してもらうことが出来るのではないかと思います。これは広島市の税務部長もそういう見解を出されている。
 県から市町村に,所得情報を出せというのが難しいとおっしゃいますが,私は,まさに県の固有の事務,市町との連絡調整事務という意味で言えば,これこそ,まさに県がやらないといけない仕事ではないかと思います。多分,市町も患者さんが助かるのだからと言えば,協力してくれることと思います。
 こういうことを県が率先してやっていかないと,県の固有の事務というのは実際なくなるのではないか。
 ですからここは広島県と市町村の壁を乗り越える本当に大事なチャンスではないかと思います。
 知事の英断が求められていると思うのですが,いかがでしょうか。

答:
 国の制度改正により,税額を証明する書類が必要になりましたが,これらの書類は,年1回申請していただくことになりましたが,非公開・非開示が原則でありまして,申請者以外が,県もその1つでありますが,市町や税務署から直接入手することは,税務情報の守秘義務の観点から不可能とされております。

 従って,これらの書類を含む小児特定疾患治療研究事業に係る申請は,制度上,患者の保護者等が直接していただく必要があると考えております。
 県といたしましては,申請書類を医療機関に配置するなど,申請者の負担をできるだけ軽減できるよう配慮するとともに,制度改正後も引き続き,保護者等が円滑に申請することができるよう,情報提供や相談などを行うなど,適切に対応して参りたいと考えております。

11. (2)小児難病対策の充実について
担当部局: 福祉保健部 答弁者: 保健福祉部長
問:
 また,今回の制度改正に伴って,県の財政負担はどれくらい軽減したのでしょうか,私は,厳しい財政状況ではありますが,患者の負担に対する単県措置ができないまでも,せめて軽減された予算については,他の小児難病対策の充実に予算措置する必要があるのではないでしょうか。何か対策を考えておられるのか,お聞きいたします。

答:
 県といたしましては,小児難病患者及びその家族への支援を図る観点から,来年度より新たに,広島大学病院内に小児難病相談センターを設置し,専門的な相談・支援を実施するとともに,小児難病患者の家族等が,経験者の立場から助言・指導を行いますピアカウンセリング事業を実施することとしております。
 さらに,市町が行う小児難病患者への介護用具等の給付事業に対しても新たに助成を行うこととしております。
 小児難病医療対策につきまして,今後とも,小児難病患者及びその家族などに対しまして,ニーズを踏まえた支援を行って参りたいと考えております。
 また,一部負担制度の導入に伴う県の財政負担の軽減額は,1,600万円と試算しております。

12.広島市民球場の建替えについて 
担当部局: 政策企画局 答弁者: 知事

問:
 現在の市民球場は昭和
32年に,建設費2億5千6百万円で建てられたが,この建設費は地元財界10社が広島市に寄付する形になっている。この地元財界10社というのが,二葉会と呼ばれていた組織である。 昭和28年,地元ラジオ局の「新春座談会」という番組で,当時の山陽木材防腐の田中好一氏,広島ガスの山口文吾氏,浜井信三広島市長の3人で「初夢を語る」という企画があった。田中氏が「広島にデラックスな公会堂とホテル,物産陳列館を造りたい」と述べたことに対して,浜井市長が「国が補助を認めないので,今はあきらめるほかない」と答えた。当時は,戦後復興が最大のテーマであり,インフレ続きで,財政は現在と同様,大変厳しかった。
 この放送を聞いた東洋工業の松田社長から田中氏に「ぜひ我々で公会堂を建てましょう」という電話があり,これを契機に,田中氏が広島経済界の人たちに呼びかけ,「寄付の額は公表しない,みんなの協力でやろう」ということで結束し3億2千万円を集め,公会堂は昭和30年2月に完成し,広島市に寄贈された。
 この建設がきっかけとなって二葉会が結成され,広島市民球場の寄付へと繋がっていく。
 そこで,この球場建設費約2億6千万円は,当時の企業規模からしてどれくらいの負担だったのか調べてみると,二葉会10社の当期純益金の合計の5%を寄付したことになる。
 しかし,二葉会の広島市政に対する支援活動は浜井市長時代で終わる。つまり,浜井市長の属人的な部分と二葉会は不可分であったということである。
 企業が,地域社会や社会的弱者に進んで寄付する社会が公正な姿,望ましい姿だと思う。そして,その橋渡しをするのが市長であり,知事だと思う。二葉会が浜井市長の属人的な部分と不可分であったように,市民球場の建替えには市長や知事のリーダーシップが必要だと思う。
 二葉会なみの10社で当期純益金の合計を1,500億円にすれば,5%の寄付で75億円が調達できることになり,これくらいのことをしなければ,建替えは困難だと思う。
 SPC方式とか公設民営方式とかの議論は,あくまで技術論であり,誰がいくらを出すのかという本質論に,そろそろ入るべきだと思う。
 今,県も広島市も財政的に非常に厳しい中で,球場の建替えに資金を出す余裕はないだろう。そこで,財界との人的ネットワークが豊富にある知事が具体的に動いて,第二の二葉会結成,新広島市民球場完成とはいかないものか。
 こうした歴史を踏まえ,知事の市民球場建替えに対する具体的な考えを伺う。

答:
 現球場は,郷土の復興・発展を願う地元企業10社からの寄附により建設をされたという経緯がございますが,当時と比べて,企業を取り巻く経営環境は大きく変わってきております。

 現在の厳しい経営環境の中で,限られた企業が,多額の寄附をされることは,株主の理解が前提になるものと思っております。
 新球場の建設につきましては,県民の方々や,経済界,スポーツ界,行政などの幅広い力が結集することによって,実現の方向に向かうことが望ましいのではないかと考えております。

(再質問)
問:
 本議会においても広島市の拠点性を高めるという議論が行われており,新球場の問題は,まさに県が取り組むべき時期に来ているのではないかと思う。
 道州制の導入を目前にして,もっと広島市のことに県が関与していってもいいのではないか。
 宮城県においては,球場の建設について知事が表に出ており,仙台市長は出ていない。これは宮城の球場が県営だからという意味だけではないと思う。
 広島市民球場の歴史的に言っても,たまたま当時,広島市に寄付したということであって,広島市がやる必然性はない。むしろ知事が率先してリーダーシップを取っても良い問題ではないか。
 次期知事の最大の仕事だと思うが,知事が取り組んではどうか。
答:
 宮城県の場合には確かに仙台市内に県営球場がございまして,そこの改築を現在行っているわけであります。
 一方,この広島市におきましては,県営球場は観音にございます。  そこにあるのが市民球場,市営球場であるがゆえに,広島市が西部運動公園をお作りになった時に,あの中に野球施設をお作りにならなかったんだろうというふうに思っておりまして,やはり現在の市民球場は市営球場でございますので,これの改築,新築ということであれば,あくまでも広島市がリーダーシップを取って行うべきものであろうというふうに思っております。
 一方,一部企業からの寄付ということにつきましては,最近では株主代表訴訟等が非常に頻繁に提起されるようになってきており,企業メセナも,ある程度,株主の皆さんの御理解を得られないとできない,ということもあろうかと思います。
 現時点では,新球場建設促進会議におきまして,3月末のとりまとめを目指しまして,引き続き,さまざまな課題を議論していくことになっております。
 県と致しましては,議会の御議論等も踏まえながら,積極的に対応して参りたいと思っております。